誰もが知っている昔話「浦島太郎」。
子供のころ、絵本で読んだり、読み聞かせてもらったりした記憶があるのではないでしょうか。
亀を助けたら、お礼に竜宮城へ…という、心優しい主人公の物語ですよね。
しかし、全国には、お馴染みの亀が一切出てこない浦島太郎の話がたくさん存在しているのです。
そして、私たちの知っている話しとは全く内容が違う驚きの物語が、2025年9月7日に放送の人気番組『ナニコレ珍百景』にて紹介されました。
その中の一つが、美しい海が広がる沖縄県の宮古島にある伝説です。
この地に伝わる物語では、なんと浦島太郎を竜宮城へ運ぶのは亀ではなく、巨大なエイなのだとか!
そこでこの記事では、『ナニコレ珍百景』でも取り上げられた沖縄・宮古島に伝わる浦島太郎伝説とエイが竜宮城へ運んだという真相、そして竜宮城の場所はどこなのかについてご紹介していきます。
沖縄県宮古島の浦島太郎伝説が『ナニコレ珍百景』で紹介された
2025年9月7日に放送のナニコレ珍百景で、沖縄県宮古島に伝わる浦島太郎伝説が紹介され、大きな話題を呼びました。
番組では、私たちが知る一般的なストーリーとは少し話しの内容が違う、全国各地の興味深いお話が取り上げられました。
例えば、秋田県に伝わる話では、亀ではなく乙姫様自身が迎えに来て竜宮城へ向かうそうです。
また、群馬県では、主人公が川に斧を落としてしまうという「金の斧・銀の斧」のようなエピソードが混ざっていたり、鹿児島県では、落ち込んでいる浦島太郎を乙姫様が慰めるという、人間味あふれるストーリーがあったりするのだとか。
このように、一口に浦島太郎と言っても、そのバリエーションは日本全国に数多く存在しているのです。
その中でも、宮古島の伝説は特に異彩を放っていました。
お話の重要キャラ?であるはずの亀が登場せず、代わりにエイが重要な役割を担うというのですから驚きですよね。
エイって乗れるんですかね。
一体、沖縄・宮古島のお話とは、どのようなお話なのか。
そして、その竜宮城はどこにあるのか。
番組をきっかけに、この不思議なお話に興味を持った方も多いはずです。
沖縄宮古島の浦島太郎伝説は本土と内容が違う?亀は出てこない!?
そして、最大の違いは、物語の象徴ともいえる亀が一切登場しないことなんです。
まずは、皆さんがよくご存知の浦島太郎のあらすじを簡単におさらいしてみましょう。

心優しい漁師の浦島太郎が、浜辺で子供たちによって酷い目にあっていた亀を助けます。
数日後、その亀が大きくなって再び現れ、お礼として彼を甲羅に乗せ、海の底にある豪華絢爛な竜宮城へと案内します。
竜宮城では、美しい乙姫様や魚たちの歓待を受け、夢のような日々を過ごします。
しかし、故郷の家族が恋しくなった浦島太郎は、地上へ戻ることを決意。
乙姫様は別れを惜しみ、「決して開けてはならない」と言って玉手箱を渡します。
地上に戻ると、竜宮城で過ごしたわずかな時間の間に、何百年もの歳月が流れていました。
途方に暮れた浦島太郎が玉手箱を開けると、中から白い煙が立ち上り、彼は一瞬にして白髪のおじいさんになってしまった…。
切なくも教訓めいた、誰もが知る物語ですよね。
この話の根幹をなす「亀を助ける」という善行と、その恩返しという部分が、沖縄・宮古島版には存在しないのです。
では、一体誰が、どうやって主人公を竜宮城へといざなうのでしょうか。
その驚きの展開が、このお話をナニコレ珍百景で取り上げられるほど面白くしているのです。
沖縄宮古島の浦島太郎はエイが竜宮城へ運んだの?
結論から話すと、

私たちの知る物語では、助けられた亀が背中に乗せてくれますが、宮古島ではエイとの出会いが物語の始まりとなります。
しかも、その出会い方や竜宮城へ行く経緯も、本土のストーリーとは大きく話しの内容が違う、非常にミステリアスで少し大人びた内容になっています。
その物語というのが『龍宮伝説』というものなのですが、そのストーリーを見ていきましょう。
沖縄宮古島版の浦島太郎『龍宮伝説』のストーリー
この龍宮伝説では、釣りをしていた主人公がエイを釣り上げてしまい、なんとそのエイが美しい女性に変身するところから物語が始まります。
まるで「鶴の恩返し」のようですが、ここからの展開がまた独特です。
主人公は、その美女と一夜を共に過ごすのです。
翌朝目覚めると彼女の姿はどこにもありませんでした。
月日は流れ、数ヶ月が過ぎたころ、主人公が再び同じ場所で釣りをしていると、海の中から一人の子供が現れ、彼に向かって「お父さん」と呼びかけました。
そして、「お母さんが待っているから竜宮城へ行こう」と誘うのです。
驚いた主人公は子供から話を聞くうちに、数ヶ月前に出会ったあの美女のことを思い出します。
子供に導かれるままに竜宮城へ行くと、そこにはあの日の美女(正体はエイの化身)が待っていました。
その後、親子3人、楽しい日々を過ごしますが、竜宮城での生活に飽きてしまった主人公は地上へ帰ることに。
本土版では3日過ごしたら300年経っていた、なんていうスケールの大きな話もありますが、宮古島版では、海底で3日ほど過ごしたところ、地上では3年3ヶ月が過ぎていた流れになっています。
地上へ戻る際、女性から渡されたのは玉手箱ではなく、お酒の入った壺でした。
そのお酒は大変美味しく、しかも不思議なことに、飲んでも飲んでも決してなくなることがありません。
主人公はこの魔法の酒を売って大金持ちになります。
しかし、富を得て傲慢になったのか、ある日そのお酒に飽きて「もういらない」と口にしてしまいます。
その瞬間、壺は一羽の白鳥に姿を変え、空へと飛び去ってしまいました。
物語の結末は諸説あり、白鳥が飛び去った後に主人公が老人になってしまったという本土版に近い結末や、財産をすべて失い元の貧しい暮らしに戻ってしまったという結末が伝えられています。
いずれにせよ、不思議な世界での体験が、最後には何かを失うという形で終わる点は、本土のストーリーと酷似するところがあり、非常に興味深いですよね。
沖縄版浦島太郎の名前は「湧川マサリヤ」
沖縄・宮古島版の主人公には、浦島太郎という名前ではなく、「湧川(わくがわ)マサリヤ」という固有の名前があります。
浦島太郎という名前は、どちらかといえば物語の登場人物としての記号的な響きがありますが、湧川マサリヤとなると、ぐっと地域性が増し、実在の人物であったかのようなリアリティを感じさせます。
マサリヤは漁師であったり、農夫であったりと諸説ありますが、この具体的な名前こそが、この物語が宮古島という場所で生まれ、人々の間で大切に語り継がれてきた証と言えるのかもしれません。
エイは「女性の象徴」?
それにしても、なぜ亀ではなくエイなのでしょうか?
しかも、ただのエイではなく美女に変身するという設定です。
これには、エイの持つ特徴が関係しているという説があります。
アカエイのメスには、「総排出腔(そうはいしゅつこう)」という器官があります。
これは、生殖や排泄などを一つの穴で行うための器官なのですが、その形状が女性の大事なところに似ていると言われているのです。
そのことから、アカエイには「傾城魚(けいせいぎょ)」という別名まであります。
傾城とは、君主が夢中になって城(国)を傾けてしまうほどの絶世の美女を意味する言葉です。つまり、エイは古くからどこか妖艶で、女性的なイメージを持たれていた魚だったのです。
こうした背景を知ると、沖縄・宮古島のお話で、エイが美女に変身し、主人公を魅了するという話が生まれたのも、少し納得できるような気がしませんか?
沖縄県宮古島の浦島太郎伝説の竜宮城の場所はどこ?
さて、物語の舞台となる竜宮城。
本土の浦島太郎伝説でもその具体的な場所は謎に包まれていますが、この沖縄宮古島の一体どこにあるのでしょうか。
しかし、宮古島周辺には、このお話との深い関わりを思わせる場所が実在します。
それが、宮古島と来間大橋で結ばれた隣の離島、「来間島(くりまじま)」にある「竜宮城展望台」です。

その名の通り、竜宮城をモチーフにしたユニークな形をした展望台で、ここから眺める宮古ブルーの海と、対岸の宮古島や伊良部大橋の絶景は、まさに息をのむ美しさです。
なぜこの場所に竜宮城の名がつけられたのか、その明確な理由は定かではありません。
しかし、展望台が建てられるほど、この地域の人々にとって竜宮城の物語が身近で大切な存在であったことは間違いないでしょう。
もしかしたら、展望台から見える美しいエメラルドグリーンの海のどこか深い場所に、湧川マサリヤが訪れた竜宮城が今も静かに佇んでいるのかもしれない…そんなロマンを掻き立てられますよね。
この物語も、ナニコレ珍百景で紹介されるにふさわしい、地域の魅力が詰まったお話なのです。
沖縄宮古島の浦島太郎伝説とエイの話のまとめ
この記事では、沖縄・宮古島に伝わる浦島太郎伝説とエイが竜宮城へ運んだという真相、そして竜宮城の場所はどこなのかについてご紹介しました。
最後に、今回の記事の内容を分かりやすくまとめてみましょう。
- 2025年9月7日放送のナニコレ珍百景で、沖縄県宮古島に伝わる、本土とは話しの内容が違うユニークな浦島太郎伝説が紹介されました。
- このお話の最大の特徴は、亀の代わりにエイが重要な役割を果たすことです。主人公を竜宮城へといざなうのは、子供の姿をしたエイの子でした。
- 主人公の名前は湧川マサリヤという宮古島固有の名前で伝えられています。
- 竜宮城の具体的な場所はどこか特定されていませんが、隣の来間島には「竜宮城展望台」があり、この地域と伝説の深いつながりが示唆されています。
今回の調査で、沖縄・宮古島の物語が、本土の物語とは内容が違う点と酷似している点があることが伝わったかと思います。
エイが美女となり、その子供が主人公を竜宮城へ連れて行くという不思議な物語は、ナニコレ珍百景で取り上げられるのも納得の面白さですね。
皆さんも沖縄・宮古島を訪れる機会があれば、美しい海を眺めながら、どこかにあるかもしれない竜宮城と、そこに伝わるエイの浦島太郎伝説に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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